column 2009.11.2
 
Rトピックス

ちょっとだけでも変えると変わる

金沢R不動産
 

金沢R不動産で紹介していた物件が、とある期間に“古道具のギャラリーショップとして活用される”ということで、その様子を見てきました。

それは「アクロバティック町家」というタイトルで募集していた物件。金沢の町家というと、もともと職人や商人の職住併用の住宅として使われてきたような、軒や格子が端正に連なった形がパッと思い浮かぶけれど、そういった典型的なものとはちょっと違った独特な町家。坂道に引っ付くようにして建つ形や窓からの眺めが印象的で、物件としての町家の面白さを教えてくれた物件、でもある。

買主さんが決まったけれど使い方は思案中。しばらくは使われないということで、10月3日から11月3日の間に行われる「町家巡遊」というイベントの中でギャラリーショップとして活用されることになった。

とはいえ、空き家の期間が長かったせいもあって元はこんな様子。

特徴があるので反応は多く、掲載直後はひと月に10組以上とご案内は多数。けれども実際見てみると引いてしまう人も多数、という状態。それが障子を張り替えて水拭きをして照明を変えただけで(もちろん、置かれた古道具の雰囲気にもよるのですが)、こんなにも印象が変わってしまった。

やっぱり、現状だけで判断するのはもったいないということでしょうか。それと同時に、放置しないでちょっとでも掃除ができると物件として印象が違ってくることを実感。

時間をまとった古道具がこの空間にはとても自然で、気がつくと長居してしまいました。ちょっと手を加える前よりも、通る風が気持ちよく感じたのが不思議だった。

2日間限定の企画として協力されたのは、大阪のチアブ家具さんと、石川県の大聖寺にあるタユタフさん。

夕暮れ時には変わっていく眺めの色合いや、人懐っこい猫の多さが印象的だったとか。

期間中には来場者の感想に耳を傾けている持主さんの姿も。「使い方は決まりましたか?」と尋ねてみると、「眺めがいいですからね。みなさんに楽しんでもらえるような形にできればと思っています」と持主さん。もう少し先の話だけど、どうやら個人宅ではなく、なんらかの形で公開されることになりそうです。

この建物をギャラリーとして活用したイベント、「町家巡遊」では他にも僕たちが紹介してきた物件でワークショップが行われたり(その様子はまた後日)、少しだけお手伝いさせてもらっています。

主催でもあるNPO法人金澤町家研究会の調査によると、金沢市旧市街地に残っている町家は約8,000棟。けれども近年約300棟のペースで取り壊されているのだとか。このままいくと文化財クラスは別としても、自分もまだ生きていそうな約26年後にはほとんどが無くなってしまうというペースにはちょっと驚いてしまう。

旧市街の街並みを造っているほとんどのものは文化財ではなくて、そのちょっと手前の庶民の家。金沢の魅力は町家だけではないとしても、魅力の多くを作っているのはごく普通の顔をしながら残っている町家だったりします。

不動産屋にとって街の魅力が無くなっていくということは、漁師さんにすると海が汚れて魚がいなくなっていくようなものですからね。それはとても困ることなので、ごくごく普通に残っていくように僕たちなりにちょっとでも多くの町家を紹介していきたいと思います。

動機は「へぇ」とか「ほぉ」とか驚く物件を見てみたいという単純なものですが。

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