column 2010.3.15
 
Rトピックス

物件選択について

金沢R不動産
 

どこにでもある内装が、ガラリと開放的な空間に。割の合う費用でカッコよく空間を変える等身大のリノベーション事例をご紹介。

天井を抜いたことで梁が露出。広がりのある空間が生まれた。

基本的に不動産の仲介を生業としている僕たちだが、扱うものに中古物件が多いこともあって、その後の改装/リノベーションのご相談を受けることも多い。「どんな事がいくら位でできるか分からない」「見知らぬ工事業者に依頼するのは不安だし、そもそも業者を知らない」、そんな声がほとんどなので改装/リノベーションの相談窓口『R不動産のリノベーションサービス』を設けているのだが、少しずつ事例が増えてきている。

昨年お引渡しさせていただいたO邸もその好例のひとつだ。本当に、どこにでもある内装だったがガラリと開放的な空間に展開した。部分的にトイレやキッチンを取り替えるリフォームではなく、ビルを丸ごとコンバージョンするわけでもない、割の合う費用でカッコよく空間を変えるリノベーション。その過程を傍で見ている僕たちも現実的に思える、等身大のリノベーション事例だ。

元々、Oさんは金沢R不動産サイト内の他の物件を検討していたのだが、その物件に買付証明書を提出したわずか2時間前に、他のお客さんからも買付証明書が提出されていた。(結局、先方に優先権があり条件も合うのでその方に決まることになる。)

けれど、そういう話は不動産を探す上ではよくあることで、「これは、他にもっと合う物件があると神様か何かが言っているのかも知れないですね」と、前向きに物件探しを再開することからこの実例は生まれた。

Oさんの求めるものは明確だった。『緑が近い環境』『将来も考えて、建増しもできる大きめの敷地』『ラフで心地のよい空間』、求めるものが明確な方が探しやすいしジャッジもしやすい。仕事柄、自分の働く時間をコントロールできることもあって、「通勤時間を考えてこのエリア」というしばりも無い。ロケーション重視で、元々検討していたエリアや、金沢の奥座敷と呼ばれ温泉郷もある湯涌エリアや深谷エリア、そして範囲を広げて白山エリアと物件を探し求めていった。

そこで候補に浮かび上がったのが、この物件だ。

120坪強の敷地に建つ平屋。切妻の屋根形状も気になった。

建物の外観は一見するとなんてこと無いが、環境はかなり理想に近い。手取川の渓谷がすぐ近くにあって、あたりを見回すと山の緑が自然と視界に入ってくる。120坪強の敷地があって、建増しにも十分対応できる。当分ひとりで暮らすOさんにとっては、平屋というサイズ感もぴったりきた。しかも、築浅の平屋が付きながら、郊外ということもあって価格は想定よりも下回っているではないか。

取り寄せた当時の図面。細かく仕切られた間取りだ。

図面を取り寄せると、ごくごく普通に部屋が仕切られていて天井が張られている様子だが、元々リノベ前提で物件を探していたOさんと僕は、現状はあまり気にならない。それよりも重要なのはポテンシャルだ。無い袖は振れないけど、袖があれば振れる。この物件の袖=ポテンシャルは屋根形状が切妻ということだった。この形状だと屋根裏空間は広く取れる。それが現状は見えていないだけで、きっと天井裏には空間が眠っているはず。「天井をぶち抜けば梁が露出した開放的な空間ができそうだ!」と、内見で洗面所の点検口から天井裏を覗くと、やっぱりあった。梁が無数に見える、かなり懐のある屋根裏空間だった。

細かく仕切られて光が遮られていた所も。だが、天井裏に魅力を発見した。

ある程度見極めができたところで、「ホントに割の合う費用で求める空間ができるかどうか?」を確かめることになる。リノベーション成功のカギは業者選びでもある。チェーン系の会社、地元の工務店、ハウスメーカー系、建築家やインテリア・デザイナー、インテリアショップと業者によって得意分野はあるが、県外から移り住むOさんは金沢に旧知の工事業者はいないし、一から選定するのは難しい。そこで、僕らは「R不動産のリノベーションサービス」というコーディネーション窓口も設けているので、Oさんに合いそうな業者も紹介させていただくことになった。

物件探しをご一緒してると、なんとなく人となりや嗜好が伝わってくる。出張で東京の目黒や各地に寄った際に家具を集めていること(その色合いやテイストについて)。フィリップ・スタルクのバスタブが気になっていること(これは予算の都合で断念したが、既製品の中で開放感のあるものをチョイスした)。普段のおしゃべりの中から、テンポやテイストが合いそうな業者を紹介させていただくことにした。今回のリノベーションを依頼したのは、野々市でインテリアショップも構えるzuiunさん。建築設計事務所+インテリアショップの組み合わせが特徴的で、家具のお話にも理解がありそうだし、以前オープンハウスで見た雰囲気は、Oさんの求める「ラフで心地よい空間」に合いそうだったからだ。

普通、不動産仲介業者は改修の詳細な打ち合わせには同席しないかもしれないけど、僕らは出来る限り立ち合わせてもらっている。それによって「いくらくらいで、どんな事が出来るのか」を理解できるし、そのノウハウが積み重なると、既存物件の見え方も変わってくる。

どこを残すか、手を加えるか。見極めがポイント。

友人を招いた時に話をしながら料理をつくれるように、リビングの真ん中にキッチンを置くことにした。集めてきた家具に馴染むよう、床材は上質なチーク材にした。スタルクのバスタブは断念したが、ショールームを一緒に周り納得のいく物を探し求めた。予定通りに天井をぶち抜き、梁が露出したギャラリーのような空間を目指した。打ち合わせを重ねて決定したのがこちらの図面だ。

キッチンは真ん中に配置。壁を抜いて22.5帖のリビングが生まれた。

中古物件の改修は、やってみないと分からない事も多い。「天井を剥がして、梁を確認していくと、あるべき場所に金具や部材が無かった」と担当のzuiun東出さん。補強にも目を配り、臨機応変に現場で対応してもらいながら改修工事は進んでいく。

結果、潔くほぼ丸裸に決定。

実は今回のリノベーション工事、外装はほとんど触らず中身だけを集中的に変えたことで、変貌振りに比べるとグッと費用を抑えることができた。お引渡し当日に同席していた融資先の担当者もちょっと驚いていたほどだ。

お引渡し時からすでに馴染んだ雰囲気。少しずつインテリアを揃えるのだそう。
最低限の手間でいかに大きな変化を生み出せるかも、リノベーションの醍醐味だ。

全く手を入れずに済み、バッチリ好みに合う物件に出会う確立は、はっきり言ってかなり低い。けど、なにも過剰にデザインしたり予算をかけなくても、キモになる物件選びと改修のやり方を間違わなければ、自分が求めるカッコいい空間は手に入れることが出来る。Oさんのケースでは、その可能性を教えてもらえたと思います。

リノベ前提で物件を探すのも選択肢のひとつ。そうやって物件を改めて見直してみると、意外に見直すポイントを発見できるかも知れません。

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