column 2010.6.25
 
Rトピックス

気になるあの空き家をお店に。~前編~

松本ゆうみ(金沢R不動産/E.N.N.)
 

この貸物件でも売物件でもなかった空家を動かし、ショップを始める2人のお話。

新竪町の通りを抜けて、犀川にかかる桜橋を渡る手前。そこに小さな建物がありました。「ニューキセーラ」と書かれたちょっと不思議な看板に、前面のガラスブロック…。昔は飲食店だったのかなという名残りはありましたが、現在はどう見ても空家。

今回は、この貸物件でも売物件でもなかった空家を動かし、ショップを始める2人のお話です。

2人に初めてお会いしたのは、今年2月のこと。2人ともニューヨークの古着屋さんで働いていて、帰国したばかりで金沢R不動産を訪ねてくれました。ヴィンテージの洋服を扱うということで、お店の建物自体も古くて味のあるものをというリクエスト。数え切れないほどの貸物件を一緒に回りましたが、なかなか納得のいくものが見つからず、ついに不動産市場に出ていない物件の開拓に乗り出すことになりました。つまり、空家の賃貸交渉。2人が気になる空家として挙げたのが、この建物でした。

約15年もの間、空家となっていた建物。

使われていない空家ですから、貸してもらうのもそう難しくないように思うかもしれませんが、これがなかなか一筋縄ではいきません。まずは持主さんに辿り着けるかどうか、それをクリアしたとしても「貸す気はない」とあっさり断られることがほとんどです。この物件も最初のアプローチから1ヶ月が経って、ようやく持主さんと直接会える機会に恵まれました。

お客様が描いたお店のイメージイラスト。

まだ借りれるかどうか分からないという状態で2人が面談に用意したのは、この空家をお店にした場合のイメージイラスト。今まで貸して欲しいという申し出を全て断ってきたという持主さんの心を動かしたのは、どうしてもこの場所でお店をしたいという2人の熱い想いでした。早くお店を開きたい、でもなかなかピンとくる物件に出会えないというもどかしい日々を過ごしながらも、妥協せずに真摯な気持ちを持ち続けたことが、15年もの長きに渡って空家となっていたこの物件を動かしたのだと思います。

天井を剥がして、一部梁が見えるように吹き抜けにする予定です。

6月中旬現在、現場にはブルーシートがかけられ、着々と工事が進められています。あの空家がどんな風に変わるのか、皆さんも楽しみにお待ちください。

6月中旬現在の当物件。工事を担当してくれたのは、コラム「物件選びの選択肢」の物件でもお世話になったzuiunさん。
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