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column 2020.5.19
 
シリーズ:わたしの家探し
第1回 タイムラインに流れてきた中古戸建に導かれた金沢移住
柳田和佳奈(有限会社E.N.N.)
 

「おうち時間」が見つめ直されている今。私たち自身テレワークで在宅時間が急増し「家って、大事…!」と身をもって痛感しています。そこで、こんなときだからこそ、ご無沙汰していた金沢R不動産のお客さんや、近しい人たちに「家にまつわるストーリー」を改めて聞いてみたい。そう思い立ち、オンラインでの“家インタビュー”連載、はじめました。

第1回は「たまたまSNSに流れてきた売家情報を見て、金沢移住を決めた」という、移住セオリー(移住先を決める→からの家探し)の逆をゆくスタイルで、理想の暮らしと住まいを手に入れた長澤家のお話です。

片流れの屋根と煙突がトレードマークの長澤邸。

SNSで一目惚れ、出会って4日後には申込

「思い描いていた“理想の家”と近似していて、SNSでこの家が流れてきた時にはビックリしました(長澤さん)」というこちらの住宅。金沢R不動産で仲介させていただいたのですが、実は設計も弊社(E.N.N.設計部「studio KOZ.」)なのです。手前味噌ですみません。(建物自体の記事はこちら

立地は「金沢21世紀美術館」や「鈴木大拙館」にもほど近い街中の住宅街。2012年竣工で、元オーナーさんがお仕事の都合で長く家を空けることになり、2017年に当初は賃貸物件として出すことに。けれど「この家を好きになってくれる人がいれば売っても良い」というのがオーナーの意向でした。その時、東京から問い合わせいただき、2日後には内見・さらに2日後にはお申し込みをいただくという、担当スタッフも驚くトントン拍子でご契約いただいたのが長澤さんご一家でした。

現在のお住まいの様子。子どもたちが屋根裏を秘密基地にして遊んでいます。(写真提供:長澤さん)

「東京ではないどこか」を探すも、行き詰まる日々

「特に急いでいた訳ではないけれど、東京以外への移住はずっと考えてはいました」とご主人の長澤秀徳さん。
長澤さんは奥さんと2人の息子さんの4人家族。金沢への移住以前は、都心の2LDKのマンションで暮らしていました。部屋で子どもたちが少しでも走ると、すぐに下の階から苦情が入るような環境で「いろんな意味で息苦しかった」と当時を振り返ります。
「金沢で家を決める5年くらい前から、新居の候補地を探していて。当時は鎌倉や葉山、軽井沢など、東京からもアクセスが良く、かつ自然があるエリアで探していました」

しかし、数年探しても“ここだ”という土地には巡り会えず「行き詰まり感があった」と言います。「決めかねていた大きな理由は土地の値段が高すぎること。当時すでに私が40歳を超えていたので、定年までに返せる額で考えると、そこに上物を建てるというのはあまり現実的ではありませんでした」
そんな時、たまたまSNSで友人がシェアしていた金沢の中古戸建の情報が目に留まります。それが現在のお住まいで、私たちが「大屋根の家」と呼んでいる住宅でした。

私たちが「大屋根の家」と呼ぶ長澤邸。(竣工時の写真)

長澤秀徳さんにオンラインインタビュー。ZOOMのバーチャル背景が「大屋根の家」…!!

理想は「どこにいても家族とコミュニケーションが取れる家」

実は長澤さんご自身も一級建築士。仕事でもずっと建築・不動産業界に関わってきました。だからこそ思い描く“理想の家”のイメージがあったと言います。

「片流れの屋根で、天井が高くて、家のどこにいても家族同士でコミュニケーションがとれるような―。僕は設計実務からは長らく離れていたので、自分で設計しようとは考えていなかったのですが、理想のイメージはハッキリとあったんです。なので、この家を見たときは、思い描いていた家とそっくりで本当に驚きました。次の瞬間には妻に『週末、金沢に内見しに行こう!』と話していたくらい。内見後も、契約に前のめりすぎて引かれなかったかが心配で(笑)」

キッチンから一望できるリビング。右手奥に見えるのは和室に繋がる「にじり口」。

階段や廊下も今や子どもたちの遊び場。

“暮らしのストーリー”が湧き上がってきた

この家をSNSで見つけるまでは、移住先の候補地として「金沢」はまったく上がっていなかったにもかかわらず、どうして長澤さんは即決することができたのでしょうか。

「この家を見て『金沢で暮らす』という選択を“閃いた”というか。もちろん、それ以前に何度か旅行で金沢を訪れたことはあって、いい街だなぁという印象は持っていました。そこに自分が思い描いていた家が現れて、『あーもう住んじゃおうか!』と。勢いです、本当に(笑)。あと、街中という立地がすごく魅力的で。近くに美術館があったり老舗の和菓子屋さんがあったり。自分たちがこの家に住んだときのストーリーが、自然と湧き上がってきたんですよね」

また、家探しを始めた段階で購入金額の上限をあらかじめ想定していたことも即決購入につながったのかも、と長澤さんは話します。

自宅近くの犀川で子どもたちとサイクリング。(写真提供:長澤さん)

“新しい暮らし方”まで、思いがけず開発

長澤さんは現在東京近郊の私立大学に勤務しているため、東京―金沢の二拠点生活を送っています(月に2回ほど金沢に帰宅)。期せずして始まったこのライフスタイルが「家族皆にとって思いがけず良かった」そうです。

「東京では数十年ぶりに母が住む実家に戻って2人で住んでいます。当初は東京にもう1つマンションを購入する予定でしたが、そうこうしているうちに父が亡くなって。こういう時間が再びあるとは思っていなかったので貴重な機会だなと。同時に、金沢の自宅に帰るのも待ち遠しく『今度帰ったら何しよう、何食べよう』といつも考えています。妻の実家が金沢から車で50分ほどの石川県羽咋市(はくいし)にあるので、そちらに通いやすくなったこともよかった。子どもたちも畑や自然の中でのびのび遊んで喜んでいます」

たまたま目に留まった家との偶然ともいえる出会いが、既成概念にとらわれない、長澤家にとっての“ちょうど良い暮らし方”まで編み出していくことにつながった。「ピンときた家」を選択することは、想定外の好循環をも生むのかもしれません。

夕暮れどきのお散歩風景。

“オーダーメイド住宅”を中古で買うということ

ところで、建築家に住宅設計を依頼する一番のメリットは、やはりオーダーメイドで“自分の城”を持てることではないでしょうか。けれど長澤さんの場合は「他人がオーダーメイドでつくった住宅を中古で買う」というケースでした。気になるところはなかったのでしょうか。

「元々自分が想像していた空間に近かったというのもあるけれど、僕は全然抵抗なかったですね。もちろん『もっとこういうのがあれば良かった』という小さな気づきは住んでいれば当然出てくるものですけど許容範囲内です。それに、中古住宅だからこそのメリットもありましたよ。薪ストーブがついてきたのは本当に嬉しかった。今では、自宅から20分ほどの里山に薪を買いに行って、ついでにピクニックをしたり、デッキで子どもたちと薪割りをしたり。家族で楽しんでいます」

薪ストーブ前で日向ぼっこ中。(写真提供:長澤さん)

デッキで薪割りしたり、薪ストーブで料理をしたり。(写真提供:長澤さん)

大胆な解法を提示してくれる、“建築家が建てる家”

自身も建築士である長澤さん、今回は中古として購入されていますが“建築家に住宅をオーダーするメリット”についてご意見をうかがいました。

「たぶん、どの家族にも色々と課題はあると思うんです。例えば、子どもが何人いて、でも持っている土地は狭くて……とか。そういうときこそ、建築家の出番だと思うんですよね。オーダーメイドならではのソリューションを提示してくれるはずです。あと、僕はこの家の天井の高さが気に入っているのですが、大胆な空間使いも建築士が建てる家ならではなのではないでしょうか」

また、ディテールへの細やかな配慮から生まれる心地よさも、実は重要なのだと長澤さん。

「小窓の位置や壁の開口部が計算して配置されています。道を歩いている人との視線は合わない絶妙な位置に配置されていて、なおかつ内から時間の移り変わりや天気、四季も感じることができます。さらに開閉可能な小窓からは空気や音も感じることができる。これは建築家が設計しなければ不可能な領域です」

外塀の絶妙な開口部(左)と開放感ある天井(右)。(写真提供:長澤さん)

「また、いろいろな建築家の方と仕事していますが、小津さん(弊社代表)は店舗の内装も多く手掛けていらっしゃるので収まりもすごく綺麗です。具体的には造作家具の作り込みの精度であったり、サッシの枠を綺麗に収めたり、巾木の幅やスイッチの配置など。そういったきちんとしたディテールの集合体が良い空間を生み出すものです。自宅のソファに座りながらそれらを眺めて、いつも自己満足に浸っています(笑)」

造作家具などの収まりの良さも建築家メイドの住宅ならでは。

にじり口から入る和室。

家がもたらす、暮らしへのフィードバック

そして、合板や突き板といった合成素材ではなく、 “ちゃんとした家”を買うことで、暮らしにも良い変化があったとか。

「マンション暮らしのときは、家に対して何もする気が起きなかったんですけど、この家に引っ越してからは定期的に床や造作にオイルを塗ったり、自分たち大切に家の手入れをしています。何というか、そういうことをしたくなる家なんですよね」

キッチンでお手伝いしたり、DIYにも取り組む子どもたち。(写真提供:長澤さん)

さらに、好みのテイストにまで変化があったようで……?

「昔は、イームズなどモダンなインテリアが好きだったんですけど、金沢の家に来てからは、北欧系の家具が気になって。昔は全然興味がなかったのに、今はこちらの方が落ち着く。自分自身のセレクトするものが変わってきているのも感じます」

“感性が家をつくる”だけでなく、“家が感性をつくる・育む”、という効果も愛着ある家からは期待できそうです。

廊下やデッキ、さまざまな「家の隙間」で遊ぶ子どもたちやワンちゃん。(写真提供:長澤さん)

家の適切なサイズとは?

「大屋根の家」は、一般的な2人のお子さんがいる住宅よりもコンパクトなサイズ感と部屋数です。家を購入してもうすぐ3年、お子さんも大きくなってきた中で気づきや変化はあるのでしょうか。

「それはこれから解決していかなきゃいけない課題だと思っています。子どもたちが中学校に上がる頃には『自分の部屋が欲しい』と言われるでしょうから。でも『そういう時期も5〜6年の話だか、別に気にしなくていい。社会人になる頃には出て行ってもらうから』と妻は言っていますけどね(笑)。逆に、今東京で住んでいる実家の方は、昔人家族で住んでいたサイズ感に母と2人暮らしなので、今度は持て余している状態。家の適切なサイズとは何か、考えさせられますよね」

屋根裏部屋。

現在は子どもたちのレゴ基地に。(写真提供:長澤さん)

今回のオンラインインタビューは、新型コロナウイルスの感染拡大により、長澤さんもしばらく金沢に帰れていない状況下でお話をうかがいました(2020年4月)。

「家に帰りたいなぁと、いつも思っています(笑)。金沢は歴史がある街なので、ただ散歩しているだけでも楽しいんですよ。『五木寛之の金沢さんぽ』という本がありますけど、本当にあの美しい文章の通りなんです」

長澤さんの言葉の端々から、金沢の自邸への愛着がひしひしと伝わってきました。3年前までは金沢に住むという選択肢すら念頭になかった長澤さん。「家」というものが、こんなにもダイナミックに人生を動かし、そして暮らしに影響を与えるものなのだと、私たちも改めて襟を正す気持ちになったインタビューでした。

リビングから見上げる夕空。(写真提供:長澤さん)

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