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column 2011.1.26
 
茨木町アパートリノベーション
茨木町アパートリノベーション、進行中! その3 工事編
小津誠一(金沢R不動産+studio KOZ./E.N.N.)
 

いよいよ、実際のリノベーション工事です!

2010年8月、工事が始まった。

まもなく、昭和40年代生まれの木造アパートが生まれ変わろうとしている。

密かに取り壊されても誰も気付かないような、どこにでもありそうな木造アパート。巷でいう不動産的価値にならえば、壊してしまった方が合理的なのかもしれない。あるいは、由緒正しい歴史的な建物なら保存して眺めることもできるだろう。しかし、この茨木町のアパートでは、解体も保存も求められていなかった。望まれたのは、生き続けていく建物へと再生させることだ。そして、それを支えるリノベーションというアイデアやテクニックがあれば、また別の、理にかなった解答が見えてくるという確信が、僕たちにはあった。

そんなプロジェクトの過程をお伝えしたくて、数回に分けてお送りしてきたコラム。今回は完成が迫るリノベーション工事現場の様子をお伝えする。

2010年8月

オーナーとの出会いから半年を経てようやく得た事業予算。この予算内で確実なリノベーションを行い、春に新たな住人を迎えることが金沢R不動産とstudio KOZ.のミッションだ。一般的な内装リフォームや建て替え新築なら、設計図面さえあれば、一気に工事へと進んでいくところだろう。

しかし、築40年の木造アパートともなると、徹底的な調査をして、様々な不安要素を取り除いていくことが必要だ。さらに、このアパートは、解体移築された骨組みを再利用しており、増改築の形跡もある。だから今回は、基礎や構造といった骨格や、電気や水道といった神経系統の全てを露わにして、目と手で確認しながら、処方も検討していくこととなる。

(左)かつては学舎だった大屋根(この建物は、近所にある新竪町小学校の、かつての木造校舎の廃材をリサイクルしてつくられている)。(右)慎重に骨組みだけに解体された様子。

2010年9月

猛暑の昨夏。現場では、まるで解体作業が永遠に続くのではないかと思えた。設計と施工会社サイドでは、図面の変更や予算との相談が延々と続いている。心許ない当時の基礎の上、構造や工法に欠陥が見つかり、羽蟻が現れたり、雨漏りも発生している。遠方にお住まいのオーナーも現場を訪れ、目を白黒することも度々だ。それでも焦らず、少しずつ解体作業を進めていくのみ。ジリジリとした夏だった。

(上)基礎や土台、主要な構造が補強されていく大切な時期。柱も補強された。(左下)床もしっかり補強。(右下)after。

2010年10~11月

金沢にも秋晴れが続く頃、予算とも相談の上で、ようやく基礎コンクリートや主要構造の補強も決まる。一気に工事が進み始めたのは、そこからだ。新しい柱が古い梁を支え、腐りかけていた筋交いは交換される。そんな新しいモノと古いモノの接ぎ目が点在する、リノベーション現場ならではの光景だ。一方で電気や水道など設備は全て刷新された。

この段階になると、ようやく予算の内訳にも目途が立ち、オーナーは自らアンティークの照明器具や建具、金物などを探し求めて古道具店や建材ショールームへと脚を運び始めていた。僕たちとも、仕上げのディテールや材料や色などの確認と議論が続いていた。

大工さんの慎重な作業が続く。デザイン的な仕上がりも見え始めた。

2010年12~2011年1月

一気に冷え込んだ年末年始。着々と工事が進む足場仮囲いの中で、ようやくそれぞれの部屋や店舗の間仕切り壁がたちあがり、古い構造体がなければ新築現場のようだ。1階では、お店の顔となりそうな鉄板貼の外壁がつくられ、5部屋全てが微妙に異なるプランの2階には、空間を感じられる勾配天井の吹き抜けが姿を現している。共有廊下では、木造校舎の名残が感じられる屋根構造が見えている。ここに、金沢Rでも紹介したことのないような新しい発想のアパートが姿を現し始めている。

各部屋の形が見えてきた。かつての名残りが活かされている。

(左)金沢Rチームでは、建物名や内覧会の企画ブレストも大詰め。(右)雪の中、オーナーも交えて、仕上の最終チェック。

残すところ、約1カ月。まさに今、塗装や仕上げ工事などが急ピッチで進められている。春のシーズンに合わせて、寒い中でも現場は必死だ。studio KOZ.設計チームも、より一層の細かなチェックに余念はない。
金沢R不動産チームでは、新たな建物の命名をブレストし、内覧会を企画するなど新たな住人を迎える準備も始めている。また、1年前、勇気をもって連絡をしてきてくれたオーナーは、出来上がっていく建物の様子をまのあたりにしながら、これからどんな人が集まってくるのかを楽しみにしているようだ。

現場仮囲いに掲げられたメッセージ。

このプロジェクトに関わった全ての人の思いは共通している。ハードとソフトを橋渡しするリノベーションによって「どんな素敵なコトがおこるか?」だ。それは、この建物での暮らしの営みであり、お店や賑わいでもある。そんなことを連想させてくれることもこのプロジェクトの魅力だろう。
こうしたプロジェクトが徐々に増えて、ぽつりぽつりと点在していき、自然に線的に連鎖を始め、面へと広がりをもっていくことを願いたいし、そうなっていけば最高だ。
金沢R不動産では、これからもそんな面づくりを目指して、不動産の仲介業務だけでなく、事業計画から企画提案、リノベーションからコンバージョン(用途変更)まで、僕たちならではの視線で続けていきたいと思う。

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