Rトピックス
茨木町アパートリノベーション進行中 その2 計画編
text=小津誠一(E.N.N./studio KOZ)

「その1 出会い編」はこちら
「その3 工事編」はこちら

今回のリノベーションプロジェクトにおける金沢R不動産の仕事は、貸し主(オーナー)と借り主(入居者)の想いの交差点を想定していくことだ。それは、物件や立地環境の個性だったり、建物がもつ物語や潜在する可能性だったりする。仲介の仕事では、それらを観察して発見することが中心になるけれど、今回のようなリノベーション物件では、創造することによる産みの苦しさや喜びが加わることになる。 そんな交差点づくりを目指してハードとソフトの両面をリサーチしていくことから始まったこのプロジェクトの最終案がこれだ。

※最近では物件オーナーの方から、本格的リノベーションの依頼をいただくことも多くなってきた金沢R不動産。この連載コラム「茨木町アパートリノベーション」では、そんなリノベーション事例で、現在まさに進行中のプロジェクトをリアルタイムにご紹介していくものです。


完成予想のイメージパース。

1階は、コンクリート土間仕様のテナントが4軒。新竪町にも通じるような生活工芸雑貨や家具などを扱うお店や、クリエイターによる店舗兼アトリエが似合うような空間だ。
2階は、木造小屋組の屋根裏ロフト付きのアパート5室は、1階と同じようにアトリエやSOHOとして使えたりもする部屋。オーナーやR不動産のこだわりが詰まった部屋になっていくだろう。


物件のオーナーから一本の電話をいただいたのは昨年。それからの足取りを振り返ってみる。

まず、連絡をもらった数日後に、金沢Rスタッフと茨木町のアパートへ向かい、アパートの様子を撮影し、ざっくりと採寸。屋根裏に入ってみたり、壁を叩いてみたり、この建物の構造体や見えない部分までを予想していく作業を行った。
さらに、近隣を歩きながら、どのような生活をする人に、どういったアパートを提供していくことが「売り」になるのか考えてみた。僕たちは、ご紹介する物件にキャッチコピーが書けるか?ということを、とても大切にしているからだ。
そうして、導きだされたコンセプトは、築40年という時間を無理なく受け継いでいけるデザイン。そして、立地にほど近い新竪町の流れを体現したような生活感が感じられるアパート。金沢中心部のまちなかだからこそ、シンプルに生活できる部屋。鞍月用水沿いの角地アパートは、そんな空気感のある一角になれば嬉しい。



構造体が見える2階アパートの部屋のイメージ。

ところが、事業計画を進める前に、解決すべき問題があった。 なぜ、新築アパートにしないのか? 愛着ある建物をリノベーションしたいというオーナーの希望もあるけれど、その条件を疑ってみる冷静さも必要だ。
新築なら、建築雑誌に掲載されるような、新しいスタイルのアパートを考えることもできるだろう。しかし、そこまでコストは掛けられない現実がある。
一方で、一般的な新築アパートでは、デザインよりも、最新の設備や機能へとコストが集中することになっていく。しかし、新築アパートが建ち続けるなか、数年後には、新しいアパートに対抗できなくなってしまうだろう。たった一度の更新時期を迎えるだけで、家賃の価格競争へと加わることになる。僕たちもそんな事例を山ほど見てきている。
さらに数字がリノベーションを選択するという正しさを裏付けてくれることになった。新築よりも費用効果が高いことが見えてきたのだ。それ以外に、リノベーションを選択する意味には、そもそも使えるものを積極的に利用するという社会的要請もある。

そしてなによりも、このリノベーションされたアパートを好きになってくれるファンをつくっていくことが大切だと考えた。