text=小津誠一(E.N.N./studio KOZ)
写真1
今回は、金沢を少し離れた富山県氷見市での話。
昨年11月、氷見市にヤモリカフェという一風変わった名前のカフェが開業しました。家を守ると書いて「家守」。ヤモリのいる家は良い家だと言います。また家守は、江戸時代には長屋の地主と店子の間の管理や運営をする人のことでした。最近では、空きビルなどの再生で再び注目されている言葉でもあります。そんな名前のカフェですから、ただのおしゃれなカフェとはちょっと違います。
写真2
閑散としてしまった商店街。
ヤモリカフェは、氷見市の中心部を貫く通り、1km以上に渡って続くアーケード商店街に面していますが……この商店街、平日の昼でも、かなりの店がシャッターを下ろしていて、いわゆるシャッター商店街という状態です。
ところがこの状態、いまでは日本の各地でめずらしくありません。延々と続くシャッターを眺めていると、長い不況を越えて巡ってきた好景気は、東京などの大都市や郊外ショッピングセンターだけのお話なのかも知れないと思えてきます。金沢でも寂れてしまった商店街って結構ありますよね。
昭和40年代あたりまでは、延々と続くこの通りもたいそうな賑わいでした。港町でもあるこのまち、大漁の日には宵越しの金を持たない漁師達にとっても、お祭り騒ぎの舞台だったことでしょう。
写真3
一家5人で氷見に移住してきた森店長。
写真4
商店街に灯がともった。
ヤモリカフェの話へ戻ります。
このカフェは、氷見市の地域再生マネージャーでもある家守公室というLLC(合同会社)が中心部の商店街活性化のために企画したお店、まさに家守が考えたヤモリカフェなのです。
この家守公室の代表・小松さん(さいたま市在住)と、氷見好きが高じてさいたま市から家族まるごとIターン移住(!)してきた店長の森さんとが出逢ったことで実現したお店です。
やはりただのカフェではありません。
このカフェ開業の企画の産声をきっかけに、商店街のシャッターを開けようという思いは広まっていくことに。
大家さんが破格の家賃で空き店舗を提供する、地元工務店は厳しい条件もなんのそので工事を買って出る。氷見市役所のお役人さんが奔走するかと思えば、氷見のためにと県境を越えた能登方面からの協力もある。いきおい、我々も設計や運営支援でお手伝いさせていただくことになりました。
写真5
地元では珍しく深夜までヤモリカフェはつづく。
写真6
もとは和菓子屋さんだった物件。
写真7
能登珠洲焼の器で出されるコーヒーと地元産野菜のピクルス。
空間の方に話を転じると……金沢片町を思い出させるアーケード街にあるこのスペース。正面にアーケードの深い影がおちるけれど、ガラス張りで店内がよく見えます。そして、天井が約3.1mと高いことが特徴です。ヤモリカフェのデザインは、シンプルで分かり易いインテリアを心がけています。あまりエッジが効きすぎて入りづらくならないよう、半歩先のデザインとでも言えばいいでしょうか。白ペンキで塗られた空間に、杉材のL字型壁二枚。この衝立のような壁の前に、コの字型オープンカウンターを配置。その上には、深夜の海に浮かぶ漁船の灯りのようなエジソンランプを使ったペンダントライトが吊される。簡素だけど少ない要素で、ウェルカムな空間をつくっています。ガラス張りの店内は、通りの人を振り向かせ、暗い商店街のなかでほのかに浮かび上がっています。
本来カフェという空間は、コーヒーやワインをいただくだけでなく、社交場として発展してきた歴史があります。このヤモリカフェも、地元の食材がやさしく料理されるだけでなく様々な試みが行われる特別な場となっています。LLP(有限責任事業組合)というパートナーシップで経営され、氷見や能登の雑貨などが販売され、まちづくり講座・家守塾が開かれたりしています。定休日には地元の人による一日限定の実験型カフェに変化したりとコミュニティのサロンとして機能し始めています。
ヤモリカフェは、決してシャッターを降ろさず今日も営業しています。
ヤモリカフェウェブサイト
http://www.llc-yamori.jp/cafe/index.html
家守公室ウェブサイト
http://www.llc-yamori.jp/
金沢R事情コーナーでは、単なる面白い物件の紹介や建築やインテリアのリノベーションだけでなく、その場がどんな使われかたをして、生きた空間になっているか? そんなR不動産的な視点で、今後も色々な出来事をご紹介していきたいと思います。
text=小津誠一(E.N.N./studio KOZ)

今回は、金沢を少し離れた富山県氷見市での話。
昨年11月、氷見市にヤモリカフェという一風変わった名前のカフェが開業しました。家を守ると書いて「家守」。ヤモリのいる家は良い家だと言います。また家守は、江戸時代には長屋の地主と店子の間の管理や運営をする人のことでした。最近では、空きビルなどの再生で再び注目されている言葉でもあります。そんな名前のカフェですから、ただのおしゃれなカフェとはちょっと違います。

閑散としてしまった商店街。
ヤモリカフェは、氷見市の中心部を貫く通り、1km以上に渡って続くアーケード商店街に面していますが……この商店街、平日の昼でも、かなりの店がシャッターを下ろしていて、いわゆるシャッター商店街という状態です。
ところがこの状態、いまでは日本の各地でめずらしくありません。延々と続くシャッターを眺めていると、長い不況を越えて巡ってきた好景気は、東京などの大都市や郊外ショッピングセンターだけのお話なのかも知れないと思えてきます。金沢でも寂れてしまった商店街って結構ありますよね。
昭和40年代あたりまでは、延々と続くこの通りもたいそうな賑わいでした。港町でもあるこのまち、大漁の日には宵越しの金を持たない漁師達にとっても、お祭り騒ぎの舞台だったことでしょう。

一家5人で氷見に移住してきた森店長。

商店街に灯がともった。
ヤモリカフェの話へ戻ります。
このカフェは、氷見市の地域再生マネージャーでもある家守公室というLLC(合同会社)が中心部の商店街活性化のために企画したお店、まさに家守が考えたヤモリカフェなのです。
この家守公室の代表・小松さん(さいたま市在住)と、氷見好きが高じてさいたま市から家族まるごとIターン移住(!)してきた店長の森さんとが出逢ったことで実現したお店です。
やはりただのカフェではありません。
このカフェ開業の企画の産声をきっかけに、商店街のシャッターを開けようという思いは広まっていくことに。
大家さんが破格の家賃で空き店舗を提供する、地元工務店は厳しい条件もなんのそので工事を買って出る。氷見市役所のお役人さんが奔走するかと思えば、氷見のためにと県境を越えた能登方面からの協力もある。いきおい、我々も設計や運営支援でお手伝いさせていただくことになりました。

地元では珍しく深夜までヤモリカフェはつづく。

もとは和菓子屋さんだった物件。

能登珠洲焼の器で出されるコーヒーと地元産野菜のピクルス。
空間の方に話を転じると……金沢片町を思い出させるアーケード街にあるこのスペース。正面にアーケードの深い影がおちるけれど、ガラス張りで店内がよく見えます。そして、天井が約3.1mと高いことが特徴です。ヤモリカフェのデザインは、シンプルで分かり易いインテリアを心がけています。あまりエッジが効きすぎて入りづらくならないよう、半歩先のデザインとでも言えばいいでしょうか。白ペンキで塗られた空間に、杉材のL字型壁二枚。この衝立のような壁の前に、コの字型オープンカウンターを配置。その上には、深夜の海に浮かぶ漁船の灯りのようなエジソンランプを使ったペンダントライトが吊される。簡素だけど少ない要素で、ウェルカムな空間をつくっています。ガラス張りの店内は、通りの人を振り向かせ、暗い商店街のなかでほのかに浮かび上がっています。
本来カフェという空間は、コーヒーやワインをいただくだけでなく、社交場として発展してきた歴史があります。このヤモリカフェも、地元の食材がやさしく料理されるだけでなく様々な試みが行われる特別な場となっています。LLP(有限責任事業組合)というパートナーシップで経営され、氷見や能登の雑貨などが販売され、まちづくり講座・家守塾が開かれたりしています。定休日には地元の人による一日限定の実験型カフェに変化したりとコミュニティのサロンとして機能し始めています。
ヤモリカフェは、決してシャッターを降ろさず今日も営業しています。
ヤモリカフェウェブサイト
家守公室ウェブサイト
金沢R事情コーナーでは、単なる面白い物件の紹介や建築やインテリアのリノベーションだけでなく、その場がどんな使われかたをして、生きた空間になっているか? そんなR不動産的な視点で、今後も色々な出来事をご紹介していきたいと思います。